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すっかり新しい季節に慣れたサラリーマンたちが疲れた顔で曇り空の真下を電車に揺られている。月が冬に近づいていくにつれて人間の服装は黒くなり、やがてとけゆく雪のためコートとスーツで喪に服す。 会社員よりも高校生よりも長くて他大学と比べてもやっぱり長かった夏休みに別れを告げ、私は久々にイヤホンで耳を塞いだ。駅を出ると小雨が降っていたので、大事な執筆道具もといスマートフォンをポケットにねじこんだ。声がした。 「久しぶり! 夏休みどうだった? ……就活とかは?」 「私あんまりやってないよーやばいよね」 「そ、そうなんだ! まだ全然平気じゃん! んーと、あのね、ウチ実は……来週内定式なんだよね。ね! ゼミさぼっても大丈夫だと思う!? まずいかな!?」 「うお! もちろん大丈夫だろ、おめでとう!」 訊いてくるのだけれど質問したいんじゃなく実は自分のことを話したがっている、という複雑な状態の友だちが数人いることが、この時期の大学四年生の特徴であった。
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