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私はとても切羽詰っていた。 「この前言ったこと覚えてますか」 究極なまでに平凡なかたちをしたパズルが、すっきりおさまることの可能な場所がこの世界には腐るほど在るってことを私はたぶん知っているのだ。 宇宙に散らばった目に見えない素粒子とか、 手巻きの機械式腕時計の中でまわる歯車とか、 pixivの色を構成するPCのピクセルとか、 ツイート数最高記録を更新した瞬間のひとつの「バルス」とか、 多くのもののうちのたった一個が地球の一部分となって整ったら、まぁるい地平線のできあがりだ。 ちいさい頃に夢見ていたものは何十光年も離れていたって一番だってそう、そう言える強くておおきな存在だった。 カンバスでコンパスを使うのが得意な神崎康介になりたかった。 「――私は書かずとも生きていけるんです! 書かない日があってもまったく健康なんです! これって向いてないってことですよね? もうやめるべきでしょう? リクナビに書いてあるボーダーライン目指して、現実世界で使用できるリアルの価値を育てなくちゃあ」 「ああ」
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