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「真面目に言ってるんですけど! 『惰眠を貪る部活、略して文芸部!』を書いてて書籍化候補になってた二年前は、熱意のかたまりみたいなものでした。今は私、書かずとも生きていけます。小説書くより寝たくなります。向いてないんです。でしょ?」
「……」
「神崎康介さんはいつも一心不乱に絵を描いていますよね。スランプになってもまたすぐに描きだしますよね。描かないと苦しそうで、苦しくても描きたくて、ああ、そんなのが芸術なんだなって」
「ふん」
びちゃっとカンバスを叩く水っぽい音がした。彼は明らかに嘲りの調子で私を笑い飛ばし、テレピンへ筆をぶっこんだ。つんと独特な匂いが広がって心地よい。私はソーサーにティースプーンを載せ、コーヒーカップから立ちのぼる湯気を見つめていた。
文字の羅列をどんどん創り出して、無意味なことに無意味な意味を持たせて、なにかできるようになった気持ちを作ってる。
私はニセモノの物書きたまごだ。書く、にピントを合わせられないできそこないのうちの一人だ。ひどく子どもじみているなぁと解ってた。
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