第1章

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そして、希を抱きしめる。その手は冷たくぞくりとするものだった。 次には猪田さんが希の唇に自分の唇を重ねてきた。 とても冷たい唇だ。血液なんか通っていない唇だった。 希は猪田さんになされるがままだった。 希が初めに感じた怖さは、この人が死人だったからだと今悟ったのだ。 猪田さんが希から唇を離した瞬間、希の瞳から光が消え闇が支配していた。 猪田さんと同じ闇が希の瞳を支配していた。 希は死人に魅入られて一生をこの向日葵荘で死人の猪田さんと共に暮らしていくのだった。 希が幸せかどうかは本人にしかわからない。 けれど猪田さんはとても幸せな時間を永遠に手に入れる事が出来たのだ。                    END
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