第1章

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希は、猪田さんの行動を見ている。白く長い指がお皿にご飯を盛りつけるとカレーを装っている。 そして、希の目の前に置く。 カレーはとても良い匂いがしていた。コップに水を入れて席に着くと猪田さんは、笑顔で頂きますと言う。かなり無理のある笑顔だ。 希もつられて頂きますと答える。 食べると、それがとてもおいしい。 希は、笑顔で、「おいしいです。」と言うと全て平らげてしまった。 それを見ている猪田さんは、今までになく満足そうな顔をしていた。 次の日から、夕食時になると必ず猪田さんが呼びに来る。 そして、希も、猪田さんの美味しい夕食をご馳走になっていた。 猪田さんは、断ってもその断りは聞かない感じだった。 だから、いつも夕食は猪田さんと一緒に食べている。 ある日希は、猪田さんに「猪田さん、いつも夕食をご馳走になってすいません。本当にいいのですか。」と聞く。 猪田さんは、笑顔で、「いいんですよ。それが私の楽しみなのですから。」と答える。
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