第1章

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ソラ屋さんは、空に関係したものならなんでも。 ウミ屋さんは、海に関係したものならなんでも。 ソラ屋さんのお店には、空色のマグカップや空色のブランケット、雲を閉じこめたペンダントトップに月の光入りのイヤリングを置いている。 お客さんが望んだら、星のかけらも手に入る。 ウミ屋さんのお店には、海色のお皿や海色のカーテン、人魚の真珠のネックレスに貝殻のブレスレットを置いている。 お客さんが望んだら、深海魚の心臓も手に入る。 まったく同じ作りの隣り合わせのお店をやっているのは、双子の少年と少女。 ソラ屋さんの店員は、栗毛を三つ編みにして後ろに下げた、そばかすの可愛い14歳のソラちゃん。 ウミ屋さんの店員は、猫っ毛の栗色の髪を跳ねない程度に短く切った、丸眼鏡をかけた14歳のウミくん。 そんな二人が、お客さんを待っている。 ソラ屋さんは、空と雲の色の看板を下げて。 ウミ屋さんは、波と海水の色の看板を下げて。 お揃いのクリーム色の七分丈のTシャツを着て、ソラちゃんは空色のロングスカートを、ウミくんは海色のハーフパンツを履いて。 そして、お揃いのエプロンには刺繍入り。 「SORA」と「UMI」の文字だけが違う、真っ白いエプロン。 「いらっしゃいませ。初めての方ですか。どのようなものをお望みでしょう。ああ、太陽の光を詰めたランタンですね」 「いらっしゃいませ。いつもご贔屓に。もの入れが必要?海賊船から引き揚げた宝箱はいかがですか」 ソラちゃんの風のようにふわりふわりした声と、ウミくんのちょうど変声期の掠れた声が、今日もお店に入ると聞こえてくる。 ソラ屋さんとウミ屋さん。 朝5時から9時まで、夜6時から10時まで開いているお店。 時間が合えば、二人に会える。 場所はね。 秘密。
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