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クレイジー「これは…っ、もたねぇな…」
呟き通り、すぐにパリン...という涼やかな音を立て、結界が破られた。やばい、と思いユキトを庇おうとした。瞬間に、衝撃波が止む。
なんとか持ちこたえたなと、ホッと一息。
クレイジー「おい、大丈夫か?ユキト」
ユキト「………」
クレイジー「ユキト…?」
自分が抱えている人物を見下ろす。確かに助けたはず。なのに返事がない。動きもしない。何故、と混乱していたが、その思考はすぐに打ち消された。
ルー「…首」
クレイジー「…あ」
よくみれば、自分の腕がユキトの首に当たっている。その状態で力強く引き寄せていたなら…
クレイジー「…うん。窒息だな」
そういえば何度か腕を叩かれてた…ような気がする。
ユキト「…きゅう」
白眼を剥いたまま弛緩しきっているユキトの姿にほんの少しだけ、1mmにも満たない程度のわずかな罪悪感を感じた。
ルー「…終わったらしいぞ」
クレイジー「え」
顔を上げれば、いつのまにか戦闘が終わっているのに気付く。
カメラは大丈夫だよな、とカメラ係であるルーウェインに問い掛けようとして、あることに気がついた。
クレイジー「…おい、ルーウェイン。カメラどうした」
ルー「………忘れてきた」
クレイジー「おいゴルァ」
ユキト「うぅ…三途の川が父上の向こうで手を振ってる…」
クレイジー「それを言うなら三途の川の向こうで…ってかあれ?ユキト死にかけてる?川見えてる?」
ワディ「あのー…」
クレイジー「うおっ…いたのか」
ワディ「今来たッス!それより…おいてかれるッスよ」
クレイジー「え」
辺りを見渡せば、出演者がいない。というか、回収班と救護班も撤収しようとしている。
クレイジー「わー!待て!ちょっと待て!!怪我人!二人!!ここにいるから置いてくなぁぁ!!」
ユキトを抱えて慌てて駆け出すクレイジー。その叫びは、青空に吸い込まれていった。
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