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──旧都市B地区…
滑り台の上にヒトが立っていた。
そしてその滑り台から離れた叢に、一人の少年がいた。
縛られた長く黒い髪とアホ毛が風に揺れる。可愛らしい、といえる顔立ち。
その人物は、ただ息を殺し気配を消して、ヒトの姿をカメラに撮していた──
☆華愛美学園
ランクAの生徒達が帰り、歓喜に湧く学園。
しかし、撮影班の者達はカメラ係を除いて救護班の元にいた。
ユキトとマスターの治療のため。クレイジーも付き添いとして待っていた。
…といっても、ユキトはとうに立ち直っていたが。
ユキト「皆楽しそうやなぁ」
クレイジー「お前は混ざんなくていいのか?」
ユキト「俺はええわぁ…柄やないし。クレイジーさんこそ、行かなくてええんですか?」
クレイジー「俺クールキャラで通ってるから」
ユキト「へー…」
騒ぐ生徒達を、一線引いたかのように静かに見ている二人。
会話も止まり、静寂が二人を包んだ。
…のは一瞬だけ。
「…ワタシハ ダレダ」
背後からの声。嫌な予感。顔をひきつらせながら二人が振り返った。
マスターが起き上がっていた。ただし、死んだ魚を目をしていた。
マスター「ワタシハ ダレダ ココハ ドコダ」
クレイジー「…ま…」
ユキト「マ…」
クレイジー、ユキト
「マスタァァァァァ!!?」
撮影班を襲った異常事態。その騒動は、学園に巻き起こっている歓喜の騒ぎに埋もれていったという…
ーつづくー
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