第1章

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 しかし、そういう点数の問題だけではない。自分の中で大きな変化が起きた。数学アレルギーが全く消えた。トラウマが消えた。怖くなくなった。今では 「まぁ、たいていの問題は質問されても困らないだろう」  とリラックスして授業に臨める。当塾は、大規模塾のように準備した授業を一方的に話すスタイルではなく、生徒の質問に答える形式なので常に本番なのだ。   今では、英語より数学の方がはるかに面白いと思える。だから、私は19歳の時点で「文系」「理系」に分類することに疑問を持っている。人間はそんなに簡単に分類できるものではない。   文系だった私が今では 「この世の現象は数式で表現されない限り、分かったと言えない」   と信じている。これは、完全に理系の発想だろう。   学校では習わなかった「数学3」も独学で勉強している。そうこうしているうちに30年も過ぎてしまった。まさに、 「少年老い易く学成り難し」だ。 ただ、分かったことがある。私は自分の指導させてもらっている理系女子のような才能はないのだけれど、人の何倍も苦労して数学を身につけたために「生徒はどこでつまずきやすいのか」がよく分かるようになった。これは、数学講師としてはスゴイ武器になるのだ。   ひっくり返って、病院送りになったり、受験会場で不審者扱いを受けて入場拒否をされたり、みっともないことが多かった。お世話になったホテルの人も最初は送迎バスは父兄は乗れないと勘違いしてみえた。 しかし、それもこれも必要なことだった。   「とても頭に入らない」が「わかる!」に変わる瞬間を知った。  こうして、今は英語と数学の両方が指導できる講師として重宝されている。
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