第1章

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  考えてみると、高校生の時に吐きそうな思いで数式を見ていた時から30年が経過した。高校生の方は私もそうであったように2年後、3年後しか見えていないはず。そりゃ、そうだ。私もまさか自分がアメリカで生活したり、数学Ⅲを勉強するハメになるなんて予想ができるはずがなかった。   父は亡くなる前に自分が大学入試に落ちた話をしていた。戦争で中国に行ったとも言っていた。大学に行って戦争に行くのを避けようとしたのだろうか。今となっては分からない。  私の進学に強い関心を示していたのは、自分の原体験があったのかもしれない。もっと優しく接していたらよかったが、もう遅い。ご両親を大切にしてあげてください。A子ちゃんが最後まで頑張れたのも、私が頑張っているのも親の支えがあったからだと思う。  ウザいと思った父は、私たちに良き少年時代を与えてくれた。私はと言うと、バツイチになって娘たちに良い家庭生活を与えられなかった。教養がないと思ったこともあったが、理屈を越えた愛情を与えられる方が人としてずっと大切なことだったのに。   できれば、感謝の言葉を伝えたかった。
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