隣家の秘密

2/10
47人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
 俺は一軒家に暮らしている。  大昔は家族四人で暮らしていたが、母が病死して、直ぐに父が痴呆になってしまった。まだ若かったのに。よほど母が死んだのがショックだったんだろう。  ショートステイなどの介護施設を利用して父の面倒をみていたのだけど、徘徊するようになったある冬の寒い朝、父は隣の空家の玄関で凍死していた。帰ってきたつもりだったんだろうけど、家を間違えたんだろうな。  妹はそれよりもっと前から家にいない。二十二で海外へ留学したと思ったら、あっさりあっちの男と結婚してしまったからだ。駆け落ち同然だったから、十年ほど妹とも会っていない。  手紙もハガキも届かないし電話もない。母の葬式の連絡も、父の葬式の連絡も出来なかった。正直生きているかすら定かではない。  父は東北の出。母は九州。だから親戚すら俺にはいない。いない訳はないのだろうけど、父の葬式を最後に親戚との絡みは一切無くなった。  だから俺は一人だ。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!