隣家の秘密

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 それから毎日、田口家を観察している。土曜日も日曜日もだ。しかし、田口さんが会社へ出掛けることはあっても、奥さんと子どもの姿をまったく見ない。  疑惑はだんだん確信へと変わっていく。  きっと喧嘩の最中に、カッとなった田口さんが奥さんを殺してしまったんだ。そして子どもも……。どうしよう。警察へ届けた方がいいのだろうか? でも証拠はない。もしまったくの勘違いだったら、隣家と最悪な関係になってしまうだろう。変人呼ばわりされるかもしれない。俺は平穏な生活が望みなんだ。ギクシャクしたり、気を使ったりしたくない。  でも、でもだよ? 本当に奥さんと子どもを殺しているなら田口さんは殺人犯だ。そんな人が隣にいたら……やっぱり嫌だ。  俺は決意した。  警察へ届ける前に、証拠を見つけるんだ。  八時半。田口さんが青色のBMWで出て行く。それを見送り、さらに二時間ほど待った。  どんどん気温が上昇していく。十時を過ぎれば外はもう三十度近くまで上昇して、誰も外を散歩したり、ましてや立ち話なんてしない。それに田口さんも俺も遠目から見て大差はない。男が庭いじりをしていると思うだけで、誰も不審者とは思わないだろう。俺は麦わら帽子とタオルで顔を隠して、スコップで庭を掘り返した。  田口さんが戻るのはいつも十時過ぎ。どうせあの若い愛人と過ごしてからしか家に戻らない。それならそんなに慌てることもない。確実にアレを掘り返すんだ。  ザクッ……ザクッ……  顎に垂れる汗をタオルで拭きながら地面を掘り進める。そこだけ地面の色が変わっていたし、二階から目視していたからだいたいどこを掘ればいいのかは分かっていた。  ザクッ……ザクッ…… 「あ」  三十分ほど掘り返し、ようやく茶色に変色したシーツのようなモノを発見した。  唇が震える。もしかして、二人の遺体が並んでいるのかもしれない。俺は庭に膝を突いて、そのシーツをめくろうと手を伸ばした。  ドックン、ドックン、ドックン……  心臓の音が耳の中で聴こえる。  もう少し……  指先でシーツを摘んだ。微かに漂う異臭……。 「あの、なにやってるんですか?」  へ?  その声に慌てて振り返った。
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