春の嵐・第一章

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新入生誓いの言葉を読んだのは政宗の友人の白井幸人だった。 滞りなく入学の儀が終わり、ホームルームも終えると政宗は晴海を引き連れ白井の席へ向かう。 「白井、スゲーじゃん!」 「ちょーたりかったー」 基本めんどくさがりだもんな、お前、と政宗が笑う。 「それよりさ、晴海ちゃん」 「ちゃん付けはやめてよ・・・」 「わかったよ、晴海。お前秋晴副会長の推薦入学ってマジかよ?」 ざわっと教室内がざわめく。 「え、う・・・うん」 答えていいものか、晴海がたじろぐ。 「そうなのか。晴海」 政宗も目を丸くする。 「だから昨日部屋に秋晴副会長とか冬矢会長が来たんだ?そういうことかー」 「羨ましいなー!あんな綺麗な人間とどうやって知り合うんだよ?」 「え・・・えっと」 「君のことだったんだね!!」 ぐいっと後ろから制服を掴まれて振り向くと、晴海と同じくらいの身長で秋晴と同じような巻髪、くりくりとした大きな瞳の少年が晴海を睨んでいた。 「え、え、何が?」 「秋晴副会長が言ってた!蓮花畑の中で一際目立つ紋白蝶がいたから揚羽蝶の群れに放してあげたわって!それって君のことでしょ」 ブンブンと振り回されて晴海は目を回してふらついてしまう。 「静、もう離してやれ」 政宗が晴海を後ろから支え、静の手を晴海から引き剥がす。 「ぼ、僕の敬愛する秋晴先輩の推薦ってことは一番のご寵愛を受けれるってことで・・・。僕の秋晴先輩がこんな庶民のものになってしまうなんて許せないよ!」 「はいはい、お子ちゃまは黙って席に座ってようねー」 立ち上がった白井がよしよしと静の頭を撫でながら静に自分の席を譲る。 「おこちゃまじゃない!僕の名前は神谷静(かみやしずか)!この学園で秋晴先輩に一番可愛がってもらってるかわいい後輩ってのは僕のことだよ!」 座ったままで胸を張る姿が可愛らしい。
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