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ー1ー
高臣晴海(たかおみはるみ)は大きな目をさらに見開いた。
真ん丸になった目、ぽかーんと開けた口許。
手からパサリと落ちる『入学案内』の封筒。
晴海が見上げるのは、いかにも品位のあるお金持ちが好みそうなお屋敷だ。
門からして光輝く金色。
眩しいくらいによく磨かれている。
門がスライドし、開かれると吸い込まれていくのは高級そうな外車たち。
時折バラバラ・・・とヘリコプターのエンジン音も聞こえてくる。
「僕絶対に来るところ間違えたよ・・・」
思わず後ずさりをしてしまった晴海の肩を誰かがぽんっと、捕まえた。
ーーーそもそもの始まりは、学校に届いた手紙からだった。
『私立陽明学園入学のご案内』
戸惑ったような表情の担任に渡されて、晴海は目を丸くする。
『私立陽明学園』。
その存在は、都市伝説のような扱いだった。
大財閥や社長ご子息の中でも容姿端な者のみに届く、薔薇模様の封筒。
男子のみの通うそこは、同性愛の宝庫だ、とか。
学園長のハーレムが出来ている。だとか。
主に一部の女子の憧れの的で、薄い本も発売されているため妄想の世界から生まれた産物ではないかと
実際に存在しているのか、それすら曖昧なそんな学園。
「僕、社長子息でも無ければ対して容姿端麗って訳でもないと思うし、そもそも受験した覚えはないんですけど・・・?」
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