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「神谷静くん、ですね。僕は高臣晴海です」
戸惑いながらも右手を差し出す。
ぶっきらぼうにその右手を握り返し、
「君になんかに負けないんだからね!」
静は言い放ち、白井を振り払って立ち上がる。
「僕の愛する秋晴裕翔先輩!お誕生日は一月一日、好きな食べ物はみぃちゃんのお料理、好きな花は深紅の薔薇、好きな匂いは煌のアロマの匂い、好きな場所は煌と同じ寮のお部屋、好きな偉人はその愛を貫き通した土方歳三!もちろん僕の好きなものも秋晴先輩と同じ!」
「お前観月先輩の飯、食ったことないだろうが」
熱弁に水を差し、白井がもう一度静を席に座らせた。
「そんな僕を差し置いて!」
「差し置いてと言うかお前は幼少部から陽明学園にいるから今さら推薦なんていらないだろうが、学園一美少年の神谷静くん」
政宗が静の頭を撫でながら言うと、静は拗ねてそっぽを向いてしまい、晴海は困り顔で白井を見る。
「あの・・・」
「放っとけばいい。いつものことだから」
白井はにっこり笑って言う。
「秋晴副会長は俺らの憧れだからさ。その推薦だって言ったら目立つしやっかまれる。ごめんな、うっかりばらしちまって」
晴海の頭をポンポンと撫でる。
「しょうがないよ」
「悪かったよ、本当に」
白井があまりにも表情を曇らせるので晴海も戸惑う。
「白井、大丈夫だよ。晴海の同室は俺だし。このクラスに悪いやつはいねーよ、な、みんな!」
政宗がクラス中に呼び掛けると、そーだぞ-、と返事が返ってくる。
「な?」
政宗の笑顔をみて、白井が安心したように微笑む。
「そっか。ありがとな。ほら、静、拗ねてないでそろそろ帰るぞ」
「一人で帰ればぁ?」
「お前がいないと寂しいだろ」
よっこらせっと脇に手をいれて席を立たせ、じゃぁなーっと引きずるようにして静を抱えて白井は教室から出ていった。
「お疲れ、晴海」
「う・・・うん・・・」
晴海は苦笑いを浮かべた。
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