108人が本棚に入れています
本棚に追加
/191ページ
「はるちゃん。首尾はどう?」
カレーを運ぶと、席に座っていた秋晴が晴海に向かってウインクを飛ばした。
「しゅ、首尾・・・ですか?」
「そう。首尾よ。私の推薦ってことは学園中の憧れの的。さぞかし華麗に迎え入れてもらえたことでしょう?」
そもそも陽明学園は幼稚舎からあるので後頭部からの編入生は少ないのでそれだけでもかなり目立つ。
しかも秋晴の推薦とバレたとなるとお祭り騒ぎになることは間違いないはずなのだけど、と彼は言う。
「なんちゃって。はるちゃんは言わないはずだったわよね。誰からの推薦だ何て、誰かに話さないとわからないもの」
「そうですよ。うっかり白井くんが話さなければ僕からは恐れ多くて言えませんし、僕みたいな地味なのが秋晴副会長の推薦って自分がいったところで信じてもらえないですよ」
「あら、そんなかわいい顔して地味だなんて」
秋晴は立ち上がり晴海の前に立つ。
カレーの乗ったお盆をスッと受け取り横に置くと、代わりに晴海の顎をくいっと掴み上げる。
「大きな瞳に長い睫毛。ピンクに染まった頬にチェリーのような唇」
秋晴の顔が近づいてきて、晴海が一歩下がると、空いていた左手で晴海の腰を掴みそれ以上下がらせないように引き寄せる。
「あ、秋晴副会長・・・」
「なぁに?はるちゃん」
「は、恥ずかしいです・・・」
「照れた顔も可愛いわ」
晴海の背中を冷や汗が伝う。
「食べちゃいたい・・・」
秋晴の顔が近づいてきて、晴海は恐怖からか思わず目を閉じる。
「ちょっと、裕翔。いい加減にしなよ」
突然口を押さえられて、体が後ろに引っ張られる。晴海がビックリして目を開けると、煌が秋晴から晴海を引き離したところだった。
「あら。からかいすぎたかしら?」
「そうだね。思わず高臣に嫉妬するところだったよ」
「だぁって、煌がなかなか来てくれないから欲求不満になりそうだったんだもの」
晴海をぽいっと放り出し椅子に座る煌に後ろから秋晴が抱きつく。
その隙に晴海は観月のいる調理場へと逃げ込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!