名物店員のいるお店

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「ようこそいらっしゃいませ」 「ようこそいらっしゃいませ」 二人の男女が同じ言葉を言った。 ステレオのような装置ではない。 店だから客が来たら、文言は決まっているから当然と言えば当然かも知れない。 ここは、普通の店ではない。 と言っても、売っているのは普通の品だ。 何が違うか?そう、ある二人の店員が普通ではない。 男のネームプレートには「稲田」と書かれ、女のネームプレートには「遠藤」と書かれている。 男は30手前くらいの歳で、短髪の似合う眼鏡をかけているやせ型の男性だ。女は20前半でショートカットが似合うスポーティなタイプの女性だ。 特に接点がないように見えるが、二人の息はとてもよく合っており、阿吽の呼吸だ。 客が商品を手に取ると、男が商品を運び、レジでは何も言っていないし、他の客がいたわけではないのに女が待ち構えている。 アイコンタクトか秘密の合図をしているのかと思ったが、他の店員はそういう感じではないので二人だけの特殊な合図でもあるようだ。 二人を見ていると、本当に息がぴったりだった。 付き合っているのかな?と思ったが、そうではないようだ。そこまで仲が良いのはよくあっても気持ち悪いくらい同じ思考を持っているのは信じられない。 夫婦別姓を名乗っているのか?と思うが、結婚をしているワケでもなく、はたまた兄妹でもなく、この店で知り合ってまだ数ヵ月しか経ってない。 怪しく思ったので突っ込んで聞いたら、二人は「精神的双子」であるらしい。 産まれた場所も親も性別も違うが、趣味や好みや考えが瓜二つの双子だと主張した。 「精神的双子」と彼等は呼んでいるらしいが、考えている事も趣味も好みも全く同じで「アレしよつかな?」と考えた事すら一致する事があるのは日常茶飯事であるいう。 特に流行りと関係無いモノをお互いが手に触れた時に、二人で話したら、とにかく一緒だったのでお互い聞いてみたら、同じだった。 信じがたい事実ではあるが、先程の息の合った対応を見ると、二人の言っている事は「違う」と頭ごなしに否定する事は出来なかった。 そんな二人の店員が働いている家電専門店「なかよし」はこの店の名物店員です。 「夢は何ですか?」と聞いたら「この世には自分と同じ人が3人いると云うので、残りの1人を探す事です」とハモって答えた。
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