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「昼間、教頭となに話してたの?」
ハルの後頭部に手を回し、
お団子に突き刺さってるピンを抜くと
ほどけた髪はさらさらと落ちてきた。
真っ黒で、絹みたいに細くて艶やかで。
ハルの髪はほんと、綺麗だと思う。
「……いつもの話。
もっと教師らしくしなさい、って」
そう云ってまた、ハルは困ったみたいに笑った。
……でも知ってる。
教頭がいなくなったあと、
ハルがちょっと涙ぐんでたこと。
「うちの学校に
ハル以上に教師らしい奴なんていないのに。
なに云ってるんだよ、あのハゲ」
「ダメだよ、咲谷くん。
そういうの」
「でも事実だろ。
ハルがいなかったら、
俺、こうやって学校に通えてない」
「……私の力じゃないよ」
俯いて、
ぎゅっと両手を強く握ったハルに悲しくなる。
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