第1章

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「お嬢、今、巷では、女子高生の顔面引き裂き事件で騒がれているように、色々と物騒になってます。どうか、学校が終わりましたら、まっすぐご帰宅されるようお願いします」 「へええ、あの事件、ウチが起こしたわけじゃないんだ」 「ご冗談を、どうして、そんなことをするんですかい」 「いや、てっきり見せしめか、何かだと」 「お嬢、我々は滅多なことが無い限り、カタギには手を出しません」 テツの真剣な眼を見ているうちに、ゆうは面倒臭くなって、もう、出て行けと、襖を閉めようとした。すると、テツが自分の右足を入れて、丁度、つっかえ棒のように、襖を閉められないようにした。どうやら、まだ話は途中らしい。 「もう、疲れたんだから、放っておいてよ」 「最後に、本当に寄り道は止めて下さい。部活の方も、辞めて頂くようにお願いします」 「だから、あたしじゃ無いよ。コイツが勝手に決めたことだ」 「では、坊っちゃんにも改めて同じ話をします」 「止めてよ。同じ話を聞くなんて耐えられない。それに、そんなに嫌なら、毎日、リムジンで送り迎えしてよ」 「はっ、お望みとあらば、明日から」 「ウソウソ、恥ずかしいから止めてね」 テツが中々引っ込んでくれないので、ゆうは最後の手段に出ることにした。 「はああ」 大きく溜め息を吐くと、急に足を崩して、艶かしい表情を作り、テツの膝に甘えるように手を置いた。 「ねえ~、テツ、あたしさぁ、最近、胸が大きくなってきたみたいなの。ちょっと見てくれる?」 ゆうは言いながら、上着を脱ごうとした。 「ま、ちょ、待って下さい。ズルいですぜ。そんな女の武器使うなんざ、それに、あなたは坊っちゃんの人格の一つに過ぎない。男ですぜ」 「へえ、じゃあ、この膨らみは何なのかなぁ。これでもあたしは男かぁ?」 わざと、テツの腕に自身の胸を押し付けながら、ゆうは笑っていた。決して、大きすぎず、かといって小さ過ぎない。 「おほん、とにかく、皆、あなたが心配なんですよ。頼むから、無茶だけはしないで下さい」 「ああ、分かってるよ。うっさいなぁ」
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