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ちょ、お前、どうぞって。ヤバい嬉しいどうしよう。
割り箸を少し持ち上げ俺の口元に近づけてさ。ハズい、マジかよどうしよう……ぐわわわわッッ!
間 接 キ ス !
ドキドキしてんのがバレないよう『ん』って素っ気ない返事をしてから首を傾げ、口を近付けて、気付いた。
これ、ハルカにキスしてるみたいな角度やんか。
恥ずかしかった。
嬉しかった。
綿あめが邪魔してるけど、夢にまで見たシチュエーション。そっと唇を近づけて目を細め、君の瞳を見ながら1番濃いピンクを食べた。
胸が、ちゅん、とした。綿あめは甘くてドキドキして君の味が切なくて。
提灯がぶら下がる賑やかな場所から随分離れた田んぼと畑の地区の外れにある俺らの家。
明かりなんか無いし。妖怪が出そうな道を通らないと帰れない。
俺の役目は毎年同じ。寂しくて遠い祭りの帰り道をチビの頃から習っている空手を武器にして夜道を一緒に歩き、お隣さんの女の子を守って無事に家に帰す事。
俺は彼女のボディーガード。ハルカはべつに俺と祭りに行くのを楽しみにしてるワケじゃない。
遠すぎて家まで送る人がいないから俺と祭りに行ってくれているのってのは、ちゃんとずっと前から理解していた。
そんな理由ってわかってても今年も2人で祭りに行けたから幸せだった。
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