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「センパイ、今のって」
「去年までN大にいた先輩だよ。僕、実家が近いから最初そこから通ってたんだけど 、わけあって一人暮らしをすることになってね。部屋を斡旋してもらったんた。すぐに引っ越しちゃったんだけど」
参ったなぁとセンパイが頬をかく。
その仕草は単に恥じらいだけじゃなくて、好きな女の子への照れ隠しにも私には思えて。
「センパイって、好きな人います?」
「いるよ」
唐突な質問に、センパイにしてはいつになく真剣な即答が返ってくる。
「それって」
いつから好きですか?
とは聞けなかった。
聞いてしまったら私じゃないって、確定してしまうような気がしたから。
なんでもないです。私は言い直す。
食べ終わった食器に、フォークとナイフを乗せ、バックを持って椅子から腰を浮かせた。
「それじゃ行こうか」
センパイはハニかむと、会計をしにレジに向かう。
「行くのは良いですけど、目的地はどこに?」
「決まってるだろ」
駆けつけた店員にセンパイは伝票を手渡しながら、
「笹垣のアパート」
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