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住んでいる場所はともかく、顔どころか生きている時間すら分からない(分からない方が面白そうだと、私がお互い秘密にしようと提案して)、ナナセちゃんとの文通が始まってから3ヶ月。
どうやら彼女は私と同じ、N大に通う2年生らしいというのが判明した。
他にも、好きなお菓子の銘柄だとか、気に入ってる服のブランドだとか色々話して、今じゃお互いに文面で“ナナちゃん”、”愛ちゃん”と呼び合う間柄にまで発展していた。
最近はセンパイとの仲まで相談に乗ってもらっている。
「今日もやってるな」
郵便受けの前にじいっとしゃがみ込んで返事を待機している私に、センパイはようとビニール袋を持った手を挙げる。
「暇なんですね。センパイ」
「その言葉。そっくり笹垣に帰すよ」
あれからというもの、センパイもちょくちょくここを訪れるようになっていた。
そしてたまに郵便受けに何かを突っ込んで返っていく。
ひょっとして、密かにナナちゃんを狙ってるんだろうか。
「言っときますが、ナナちゃんは私の嫁ですよ?」
「そんな発想、どっから湧いてくるんだよ」
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