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「そう、ですか」
まあ、なんとなく予想はついてました。
あの日、喫茶店でマリアさんと会ったときから、センパイの様子はどこかソワソワしておかしかったから。
「頑張ってください」
「うん。頑張るよ」
ねえ、センパイ。
「そのひとのこと、いつから好きですか?」
「一年前から」
一年前のあの日から、僕はずっと一途で頑張り屋な彼女のことがずっと好きだった。
「‥‥‥フラれちゃえばいいのに」
ぽろりと、出てしまった本音。
聞いて欲しくない。でも聞いて欲しかった。
それが、明人センパイの彼女でもない私にできる、最後のイジワル(抵抗)だったから。
「振られないよ。絶対にね」
「片思いのクセによく言いますね」
ずぴぃ。
私は鼻をすする。
「だって知ってるからな。告白の結果」
意味わかんないです。
「告白成功したら、もう二度と私のトコに来ちゃ駄目ですからね」
「笹垣、それは」
「彼女さんのことだけ、大事にしてあげてください」
階段を降りていくセンパイの後姿を、私は最後まで目すら向けることはなかった。
「‥‥‥さよならです。センパイ」
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