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「ここ、空き部屋ですよ?」
夕方、アパートに帰ってきた私は、件の部屋から出てきた、掃除に来ていたらしい大家さんの一言に驚愕した。
「えっと、本当に?」
こんな嘘ついてもしょうがないと思うんですけど。とでも言いたげに大家さんは頷く。
「ほら、ひとっこひとりいないでしょう?」
大家さんに促されて私も中を覗いてみる。
本当に何もない。
人どころか、そこには家具一つありはしなかった。
「おかしいな。昨日、あんなに騒がしかったのに」
「騒がしかった、ですか?」
大家さんの質問に、私はハイと答えた。
「かなり盛り上がってましたよ?だから私、てっきり友達でも呼んで引越し祝いでもしてるのかなって」
「や、やめてくださいよ。わたし、オカルトとか、ホラーとか苦手なんですから」
そういうつもりで言ったんじゃないんだけどな。
でも、いつも凛々しい年上の女性が(いっても大家さんは二十代前半だけど)、おどおどしている様子には、女の私も不覚にもキュンとしてしまった。
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