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街の中心地から外れた場所にあるアンティークな建物。
それは石造りの外観が印象的な小さな花屋だった。
そこの女主人は、小柄ながらも凛とした人で、クリッとした大きな目元が特徴的。
いつも口角を上げて小さく微笑んでいて、栗色の緩やかな巻き髪は、黒いゴムで後ろでひとつに束ねている。
そして、薄いピンクのワンピースの上から、白いエプロンをつけていて、なぜかいつもそれが風になびいていた。
静かな場所にある、小さな花屋。
そのなんの変哲もない店にあるひとつの花。
薄い黄色の小花があり、それを見つけてくれる客を、女主人はひたすら待っていた。
特に珍しくもない小花で、大輪の花を咲かせる花々に埋もれている。
だけどそれは、この世界の裏側にある別の世界へと導いてくれる花だった。
かつては明るさと幸せに満ちていたその世界は、今は暗黒の闇に覆われている。
その世界を救う人物を、ひたすら待ち続けていた。
勇敢な戦士でも、可憐な戦士でもいい。
その者なら、自然と導かれるようにここへ来るから。
そしてきっと、この花を手に取るはず。
今まで、誰もが目にも留めなかった聖なる花を選ぶ者。
その者が不幸に包まれた世界を救ってくれるはずだ。
そうやって、ひたすら待ち続けるその女主人こそ、別世界の女神だった。
彼女には、世界を救う力が及ばなかった。
だから、伝説の戦士を求めて、この世界へやってきた。
ただひたすら、そのときを待ち続けて、彼女は今日も花屋に立つ。
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