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梅雨の中休みで数日ぶりの晴れがのぞいている今日。
日にち、6月19日(木)
時間、AM8:33
場所、東宮(ヒガシノミヤ)高校屋上
状況、昨日までの雨の所為で十分に潤っている床にこの学校の制服を着た男子生徒が1人座っている。
「……っ!?」
誰かと言うと、俺である。
いや待て、違うぞ、勘違いするな、自分の意思でこうしているわけじゃあない。
正確に言うと、眼の前の状況に驚き、勢いでのけぞり、尻餅をついたのだ。
じゃあ何がそうさせたのか?
答えはそこにいる彼女が示している。
黒髪のロング、人形のように華奢な身体、つり目で柔らかそうな唇。
言葉足らずな俺ではその尽くまでを説明できないが一言で形容するなら、美人。
そして彼女は東宮高校の女生徒服を身に付けている、つまりはここの生徒である。
・・・
……否、生徒だった。
さて、こうなると俺は彼女を視たから驚いて尻餅をついたことになるわけだが、まぁ実際そうなのだ。
彼女を視たから、視てしまったが故に驚き、尻餅をついた。
彼女の美しさに目が眩んだから、なんてそんなキザな理由じゃあない。
驚きで言葉を発することのできない俺に、彼女もまた、驚きを混ぜた声で、俺を見下ろし、自分を指差しながら言った。
・・・・・
「あなた、私が視えてるの?」
彼女のセリフの意味、それから俺の一連の行動のそれ。
全ての答えは1つに帰着する。
なぜなら彼女は……そう、如月 二葉(キサラギ フタバ)は、一週間前のこの日に、この場所で
自殺したはずなのだから……
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