Prologue

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   真上には青い空とむくむくした白い雲しかないけど、セミの声って必ず頭の上で聞こえる。  いつもそんな気がしてた。  セミの輪唱に混じって遠くで響く、幼いカウントダウンの声を空き地のドラム缶の中で聞きながら、ゆっくりと深呼吸を繰り返す。  狭い場所は風が通りにくいのか、かなり蒸し暑い。  鉄さびと、草と土の匂いで息が詰まりそう。  鬼ごっことかケイドロとか、道具を使わない遊びっていっぱいあるけど、あたし達のグループが愛して止まないのはかくれんぼ。  足音が近付くと、緊張でうっすらと汗ばんでくる。苦しい緊張感は、遊びの中でなきゃ耐えられない。 .
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