ルール その44

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「初枝先生も、お世話になりました」  鈴原の祖母に向かって改めて深く頭を下げる。  初枝は真面目な顔で頷いてくれた。 「いつでもいらっしゃい。……彬を、お願いしますね」 「ばあちゃん……」  鈴原が目を見張って小さく呟く。  初枝は鈴原の方を見やって軽く睨んだ。 「お前はもう少しマメに連絡を入れてちょうだい。私だって心配するのよ」  眼鏡の奥の目がさらに丸くなる。慌てた様に何度も頷く。 「う、うん……っ」  初枝も鈴原も、またお互いに下を向いて照れ合っているのをみて、鈴原がこの場所で、この人の元で育てられて良かったと心から思った。  じゃあ、と手を振って別れた。  三人がロータリーに降りて行き、階段上の少し離れた位置から車に乗り込んでいく様子を眺める。──と、ドアに手を掛けた晴海が動きを止め、思い切ったように振り向いた。 「晴海?」  運転席に乗りかけた智晴が、訝し気に顔を上げる。  振り返った晴海の睨むような目と、目が合った。  そのままずんずんと大股でこちらに戻ってくる。  宮坂の真正面に立ったときには、晴海は首まで真っ赤になっていた。 「あ、あのさ」  目の前に立った見下ろす位置にある顔を瞬きして眺める。 「あ、あの……っ」  握り締められた拳はぷるぷると震えていた。
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