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「俺は、だからっ、と、」
と?
「と、とっ、ともだちに!なって、やっても、…………い、いいぜ」
最後はしりすぼみにぽそと言った。
遠くで智晴がこけたように見えた。
言い切ったらしい晴海は、顔をカッカさせて気の抜けた風船のようになっている。
隣の鈴原は口を開けてぽかんとしていた。
宮坂は妙な感慨を覚えていた。
友達、とは。これはまた想定外。
「……さすが彬さんの身内」
「へ?」
ぼそと呟くと、呼ばれたと思ったのか鈴原が振り向く。
宮坂は晴海に向かってにっこりと微笑んだ。
「いいですよ」
晴海が顔を上げる。目がまん丸に見開かれている。
「友達になってあげてもいいですよ」
「ほ、ほんとか!?」
ぱっとわかりやすく顔が輝いた。
宮坂はにっこりしながら頷く。
「ええ」
鈴原の地元に従順な手駒がいるのもいいだろう。情報源としても使える。
「……おい、なんか笑顔が黒くねえか」
向こうで智晴がなにかごちゃごちゃ言っているようだが、晴海は喜んでいるし鈴原は目を潤ませてなんだか感動しているようだから問題ない。
では早速首輪、もとい、連絡先の交換をというと、嬉々としてスマホを出してくる。
「晴海と友達になれて嬉しいな。用事があるときはこっちから連絡するから」
「うん!わかった!」
晴海はこのときばかりは素直な様子で、嬉しそうにスマホを握り締めて頷いていた。
智晴だけが胡乱な目をしていたが。
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