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「えっと、そ、そうか!体動かすのはいいことだよな!」
「そうですね。部屋余ってるし、トレーニングルームでも作ろうかな」
「いいんじゃないか、うんっ」
なんだか無性にドキドキする。
今更だというのに、恥ずかしくて顔があげられない。
本当に今更だ。
恋人だし、裸なんかとっくに見てるし、えっちなことだってすでにしていて、……まあ、それは流されていたり、中途半端で終わったりしているけれど、でも今はやるぞ!と覚悟して、昨夜は抱いてほしいなんてことまで思っていた。
でも、なんだか今は、目の前に立つ宮坂の存在に、生々しいような色気を感じる。
触れてなくても感じる湯上りの湿った体温とか、しっとりと上気して色味を帯びた肌だとか、濡れて滴を零す艶やかな髪とか、仄かに感じる石鹸の香りとか。
元々、事あるごとに色気を振りまく男ではあるけれど、今はそういう素振りを見せているわけでもないのに、なんだかすごく……。
宮坂はいつも通りで変わらない。つまりは受け取る側、そんなことを意識している彬の方がいやらしいということで……。
両手に力を籠め、一瞬沸き立った恐れを伴った気後れを打ち消す。
「……彬さん」
──しっかりしろオレ!今度こそちゃんとするって決めたんじゃなかったのか!
恋人同士でしたいと思うのは、恥ずかしいことでも、悪いことでもないはずだ。自分がことさらいやらしい人間というわけじゃなく……宮坂だってそう言ってくれた。
昨夜はそんなこと考えることもなく、……いや、やっぱりちょっと恥ずかしかったけど、でもあの時はごく自然に、純粋に、宮坂と深くつながりたいと思った。そこに変なうしろめたさは無かった。
──今夜は二人きりで明日は休日。いまこそ、あの時のあの気持ちを、もう一度思い出すんだ!
「み、みやさかっ」
「彬さん。オラフが死にそうです」
「え?」
気が付くと、ぬいぐるみの首がくびれて傾くほどに絞めていた。
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