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一瞬の思考停止の後、額を押さえた己の腕がワイシャツのままなのに気がついた。
ズボンはなく、下半身は下着一枚のようだった。
再び割れるような頭の痛みが襲ってくる。
なんだ?なぜ?なんで?だれ?どうして?
痛みの上に吐き気も加わって、余計に状況に対する判断が付かない。ぐるぐるぐらぐら目を開けているのも辛くなってきた。
とそのとき、目覚ましがけたたましく鳴りだした。
脳に直接突き刺さるような強烈な音に、ぎゃっと小さく悲鳴を上げてヘッドボードの時計を叩き止める。同時に、布団の中の男がもぞもぞと動いた。
はっとして目を戻すと、低く唸るのがきこえてくる。
布団から顔を出した男は眉間に皺を寄せながら無理やりといったように瞼を開き、半覚醒の顔で彬を見つめた。
「……ぁ……かちょー……おはようございます…………」
枕に頭をのせたまま、寝起きの掠れた声で言う。
知らない男……ではなかった。
だが知り合いと言うほど近くも無い。
まだ20代半ばの、やたら整った顔立ちのイケメン。わが社の王子とかなんとか、よく女子社員に騒がれている男。
たしか営業課の、なんとかというやつだ。
なんとか坂……みやさか、だったか。
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