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12時きっかりに席を立った途端、斜め前の席で同時に椅子を引く音がした。
目を上げると、立ち上がった八木澤が顔を紅潮させている。
「お昼ですよねっ。俺もお供します!」
大柴の方を見ると、「私はお弁当組みなんで」と笑った。
頷いて、あとは八木澤が付いてくるに任せた。
昼食は必ず12時、大概八木澤と一緒になる。去年まではほとんど一人だった。
人に混じって飲み食いをするのは苦手だ。飲み会もだが、会社のランチはなおのこと。
他人の食事ペースに合せるのも面倒だし、終わればさっさと席を立って次のやるべきことに掛かりたい。
目の前に食べ終えた食器を置いたまま、長々お喋りに興じられる者達のことが、彬には全く理解できない。
だらしないし、時間の無駄ではないか。だから残業をする羽目になる。
とはいえ、こういった自分の考え方が顰蹙を買うのも分かっていた。
だから社食で知り合いを見かけても、わざと離れた席をとる。
今日も、同じ総務部の社員達が一角に群れて食事とお喋りに興じていたが、知らぬ振りで素通りした。
相手も気難しいと評判の課長にわざわざ声なんかかけない。
くっついてくるのは八木澤くらいだ。
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