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会社からの帰り、電車の中でメールの着信があった。
相手は宮坂で、今日も遅くなると言う。
『デートの待ち合わせはどうするんだ』
少し迷って、そう返信した。
間を置いて、返事が返ってくる。
『駅の傍のカフェ。11時でどうですか』
一緒に店情報のURLも送られてきた。
地図を開いてなるほど、ここかと確認していると、またメールが届いた。
『ノリ気ですね。彬さん』
「ち、ちがうっ」
思わずスマホに向かって怒鳴りつけた。怒鳴ってからはっとして、周囲の乗客に目をやる。
迷惑そうに顔を顰めた向かいの席の中年男に頭をさげて、慌てて携帯をしまって腕を組み寝たふりをした。
デートなんてノリ気なんかじゃないのに。というか、彬さんだなんて誰が名前呼びを許したっ。
──ふと、そういえばと思いついて目を開ける。
「……サンドイッチとおにぎり、どっちがいいか聞きそびれた」
車内広告を睨んで首をひねり、しばしの間思案した。
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