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そのライブハウスは、タケヤマが住む市内の中では新人登竜門。的な扱いになっていて、練習スタジオと隣接する形になっている。
自ずと、そのスタジオを活用する常連のバンドで出演の枠が埋まるのが定石となっているが、そこのオーナーと言うのがまたまたバンドをたっぷりと経験してきた人間であり、メジャーデビューを果たして全国を組まなく廻ったりした大物らしい。
と、言ってもそれはタケヤマ達みたいな”ペーペー”のバンドマンに幅を利かせるために、どこからか話が飛躍したのだろう。
話を盛ることに関してだけは一流品だからな。ヤマザキは、そう言って笑った。
ヤマザキはタケヤマ達より年齢が3つも上で、自分が同じ学校の先輩という事が解ると嬉しそうな顔で自分も軽音楽部にいたのだと話し始めた。そして、自分も文化祭でバンド演奏をしたこと。現在は、前途したライブハウスで何ヶ月かに数回ライブをしたりしてることをつらつらと語った。
タケヤマ達は学校の朝礼で並ばされているよりも、かなり姿勢を正してヤマザキの話を聴いていた。ヤマザキは一見、そこら辺にいるチンピラのような見た目だったからタケヤマ達は最初、カツアゲされると思って肩をずっと竦めていた。
カネコは首根っここそ掴まれていないものの、片腕をしっかりとヤマザキに掴まれていて、それが、よほどの力を込められているのか、時折、顔をしかめているのが心痛く映った。
ヤマザキという男は、無論、タケヤマ達に突然、声をかけてきて逃げ出した彼らをとっ捕まえたあと、そんな話をタケヤマ達に教授するかのように繰り返しながら、カネコに対して、こうしてないと、お前ら、また逃げ出すだろ? と、軽く凄んでみせた。
カネコは少し苛立ちを見せながらも愛想笑いを浮かべるしか出来ないでいたが、いつもの彼らしい飄々とした様子は消え、早くこの厄介者が消えてくれ。と、言わんばかりに俯いてばかりいた。
「まあ、そんなことはどうでもよくてよ。本題に入るとすっか。キミたちさ、今、カネもってんだろ? 」
ヤマザキは、尚も快活なそぶりと笑顔で、自分の腕をカネコの片腕から肩へと廻すようにした。
やっぱり、カツアゲだ!
3人は思わず大声をあげた。
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