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翌日ケイは幸乃を伴って北区の山の中にいた。
水呑のトンネルを越えて左に曲がると橋がみえた。
川端を下流に向って歩く。
途中で幸乃の足が止まった。
「此処までかい?」
幸乃の記憶が途切れた場所だ。
現地に行けばもっと思い出すかと期待して連れて来たがやはり無理らしい。
周りの景色を携帯のカメラに収めて警部に写メを送る。
電話を入れた。
川の水はここ何日かの雨で水嵩を増している。
少し下流には十何年か前の水害で人の住まなくなった家が何軒か立っていた。
「忙しいところすみません。
その後何か情報らしきものは?
此方もあれ是やってはいますが今のところ何も進展していません。
彼女が最後に見ただろう場所の写メを送りました。
参考にしてください」
「分った、見てみるよ。
ああ、其れかどうか分らないが工事の重機なんかを扱うレンタル会社から可笑しな話を聞いたよ。
昨日返却された重機を洗車したスタッフが動物の肉片らしい塊がキャタピラの間に詰まって取れなかった言っていたらしい」
「その会社は何処ですか?
よければ連絡先を教えてください」
ケイは横の幸乃を見た。
49日の間とはいえ、あまり長い時間外に連れ出すのも彼女の負担になる。
「教えても構わないが・・
実は僕の同級生が経営してる会社なんだ。
その話も飲んだ時のものだから確かめてから電話を入れるよ」
気にはなったが不確かな情報で幸乃を連れては行けない。
頼みますと言って電話を切った。
「大丈夫だ気にしないで・・天気も良い・・
相手が僕でなんだけど散歩と思って気楽にして」
ケイがそう言って顔を覗くと幸乃も微笑んで頷いた。
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