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神戸異人館街を少し下がった辺りに小さな路地がある。
その突き当たりに知る人ぞ知るカフェがあった。
その名は『炎』
ほら、今日も一人心に闇を抱えた女性がそのドアを開ける。
(カラン)『カウベル』が鳴った。
「お客さん・・
どなたの御紹介ですか?」
見たところ十七~八歳の若い男性が声を掛けた。
「あ、すみません。
この時間に行くように言われて・・
でも紹介してくださった方の名前が思い出せなくて・・
また来ます」
がっかりした様子で帰りかけた女性に今の男性が声をかける。
「お客さん、コーヒー飲んでいきますか?
それとも紅茶がいい?」
女性は遠慮がちに良いのかと聞いた。
「ええ、いいですよ。
開店までは一時間はあります。
ゆっくり座ってて」
女性をカウンターに座らせると少し迷ってから紅茶をその前に置いた。
女性が彼に尋ねた。
「あの、マスターは?」
忙しそうに開店準備をしていた男性が女性の傍に来て笑う。
「マスターに御用ですか?」
そう聞き返した。
女性は不安気に彼を見る。
「あの、此処って『ほむら』でいいんですよね?」
そう聞いてから自分を見て微笑む若い男性を見た。
「はい。
間違いなく炎(ほむら)です。
因みに僕がマスターの炎ケイです」
女性は驚いたように彼を見た。
「何か悩み事ですか?それとも・・
復讐の依頼・・かな?」
ケイと名乗った若いマスターは優しそうに彼女を覗き込んだ。
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