復讐の報酬

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      「ケイ、コーヒー入れてくれ」 ドアを開けるなりルイがそう言ってカウンター席に座った。 「相変わらず暇な店だな」 そう言いながら周りを見回す。 カウンターは8席、ボックスは4人掛けで6席、満席になっても三十人ほどしか入らない店には相変わらず客らしき人影はない。 ルイも何年も通ってはいるがこの店が満席になるなど見た事が無かった。 先代の頃はそこそこ客が入っていたらしいが、ケイの代になって周りに大型コーヒーチェーンが出店し始め昔からの常連客も歳を取って一人、二人と寄り付かなくなったと聞いた。 もっともケイが先代から受け継いだのはこの店だけではない。 この辺りだけでも賃貸しマンションやテナントビルなどその資産だけでも二十億は下らない。 黙っていても毎月何百万もの賃貸し料が彼の口座に振り込まれる。 店に客が入ろうが、入るまいが彼に取っては何でもないのかも知れない。 現にルイなどほぼ毎日此処でコーヒーを飲み軽食を食べるが、一度も金を払ったこ事がない。 「ルイ、暇か?」 コーヒーとサンドウィッチを前に置くとケイが尋ねた。 「バイトか?」 「うん。 いつものやつだ。 今回は大阪、東京、博多辺りまで行って貰う事になるが大丈夫かな?」 「いいけど、そんなに広域なら僕一人で間に合うのか?」 ルイはサンドウィッチを食べながらケイを見る。 「まあ博多はキラに頼む事にしょうと思っているから、大阪と東京を任せたい」 「東京だけなら構わないが大阪はちょっとなぁ。 前の時の女達が煩いし」 ケイはルイの顔を覗いた。 「じゃ二割増しなら、どう?」 「二割かぁ・・ よしコール!やるよ」 残ったコーヒーを飲み干した。 「で、いつからだ?」 「今日もう少し話を聞いて決めるよ。 仔細は君の携帯にいつもの様式で送る」 ケイは自分の財布からクレジットカードを一枚抜くとルイに渡した。 「使いすぎるな。 それと『危ない事』はするなよ」 そう言って笑った。 「ああ、分ってる」 「女がらみもだ、ルイは情にもろい」 そう言ってカウンターの食器を下げた。 ルイはカードを財布の中に仕舞って黙って店を出て行った。
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