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「おっケイ君またデート?」
山崎は新聞をたたみながらケイを見た。
「いえそう言う訳では・・
まあ相手は女性だからデートみたいなものですが」
そう言いながらテーブルに食事を並べた。
「いいよ店番くらい。
でも僕何も作れないよ」
「大丈夫ですよ。
メニューはアイスコーヒーだけにします。
ケーキは其処の陳列から好きなのを取って貰ってください。
料金は一律で五百円でいいです」
「それじゃ儲けが出ないだろう。
まあ、僕はかまわないが」
ケイは笑いながら山崎を見る。
「先生も好きなようにしてください。
二時間位で戻れます」
そう言って熱い紅茶を入れると「サービスです」と山崎の前に置いた。
山崎に店番を頼むとノートパソコンを持って店の裏にある自宅へ戻る。
入り口のロックのスイッチを入れてチェーンを掛けてから地下への階段の明かりを点けゆっくり降りた。
地下室のドアを開け中に入る。
先程店を訪ねて来た女性がケイを待っていた。
「お待たせしました」
女性は黙ったままケイを見つめた。
「大丈夫ですよ僕以外誰もいない。
何を言ってもどんな姿に戻っても僕は驚いたりしない」
そう言うと赤い蝋燭に明りを灯し照明を消した。
その瞬間今まで美しく整えられていた彼女の髪が血に染まり着飾っていた服はドス黒く汚れ片方の腕は失われていた。
「それで君はどうしたいの?
君をそんなふうにした相手を探したいの?
それとも相手は覚えていて君と同じようにしたいの?
相手が生きてさえいれば僕が君の思いを叶えてあげるよ」
ケイは女性に向けて手を差し出した。
彼女は無言のまま残った方の手をケイの手に重ねる。
その瞬間ケイの頭の中に彼女の思念が入って来る。
彼女が最後に見たであろう光景がケイの脳裏を駆け巡った。
ケイは少しの間その場に座り込んでから彼女を見た。
「分ったよ・・
君はどうするの?
僕を信じて先に逝くかい?
それとも此処に残って見届けるかい?
それとも・・
僕達と一緒にやるかい?」
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