不安

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「キラ、大丈夫だった?」 マリアが心配そうにキラを見つめる。 今にも泣き出しそうな顔だ。 キラは思わずマリアを抱きしめた。 「マリア、もうこの遊びに首を突っ込むな、不安で堪らない」 マリアはキラの言葉に少し驚きながら彼を見つめた。 「分かったもうしないわ。 でも寂しくなったらケイ君に電話する位はいい?」 キラは笑いながらマリアを見る。 「そんなの必要ないだろ? もうケイを通さなくて良い。 直接僕に電話しておいで。」 「いいの?」 「ああ良いよ、たまにはこうして君を抱きしめに東京へ行くよ」 マリアは嬉しそうににキラの胸に顔を埋めた。 キラは彼女の髪を撫でた。 「ごめん・・ まだ君が本当に望んでいる答えは言ってやれない・・」 「いいの・・ もう何も望まない。 どうせ貴方しか愛せないもの」 マリアはそう言ってキラを抱きしめた。 その言葉にキラは胸が熱くなる。 マリアの中の自分に対する愛が見えた。 「ああそうだな。 でも君からの電話が無くなったらケイが寂しがる・・」 そう言って笑った。 ルイは三ノ宮駅で電車を降りた。 昼からはポートタワーの側で撮影がある。 だが美也子が心配で堪らない。 何とか最悪の状況からは守ってやりたい。 悲しい思いをさせたくない。 無駄だとは思ってもじっとしてはいられなかった。 撮影が終わると打ち上げを断りタクシーでケイの店に向かう。 ルイが店に入って来るとケイが黙ってコーヒーをカウンターに置いた。 その前にルイが座る。 「彼女来るって?」 「ああ、でも彼女じゃない・・ そんな事できる娘じゃ無いんだ」 そう言ってケイを見つめた。 「そうだといいな・・ ルイ、気持ちは分かるつもりだ。 だがもう何も出来ない。 今僕の家にマリアもキラもいる。 前田も神戸にいるし、明日になれば博多から純子も神戸に来る。 明日美也子が来て幸乃が目覚めたら僕達の仕事は終わる。 後は幸乃が三人の中から自分を殺した相手をみつけ出す。 僕達は只黙って見ているだけだ」
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