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「その赤蓑が平成の世でも生きていて、山に入ってきたカップルを殺したんですか?」
武蔵が箸でテレビのニュースを指す。
「ああ、そうじゃよ。赤蓑は山で生き抜くうちに、山の住人から力を授かって不死の体になったんじゃ。そんで、山に来る不届き者に裁きを下すのじゃよ。大方、このテレビで流れている者共も山を汚してニャンニャンしていたから、赤蓑の怒りに触れたのだろう」
ニャンニャンってお婆さん、いくつですか? 苦笑いをしてそばつゆを飲む。
「お婆ちゃん、また、お客様に変な話してるの?」
店の奥からエプロン姿の中年の女性が出てきて、老婆の肩を抱いた。
「ごめんなさいね。お婆ちゃん、お客様が来るといつも怪談話をして怖がらせようとするの。さ、お婆ちゃん、奥でネギ切って下さいね?」
女性は武蔵に謝ると、老婆を店の奥に連れていく。
「お前さんも、気をつけなさいな。この辺りで不埒な行いをすると赤蓑に目ぇつけられるぞ」
姿を消す前に老婆は武蔵に声をかけた。武蔵は残りの蕎麦を胃にかきこむと、
「ごちそうさま」
と、会計を済ませて店を出た。
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