その1 言い伝えと美少女

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「あの……」  武蔵の訝しげな視線に緊張したらしく、少女が恐る恐る口を開いた。 「ごめん、ごめん。どうしたのかな?」  彼女の緊張を解こうと、武蔵は優しい口調で問いかける。 「あの、大変申し訳ないのですが、お兄さんの車に乗せてもらえませんでしょうか?」  潤んだ瞳で少女がお願いをする。 「この先にある別荘で部活の合宿があるのですが、私だけ出発するのが遅れてしまったんです。ここまでタクシーを使って来たのですけど、途中でお小遣いがなくなってしまいまして……。ここから徒歩だと日没までにたどり着けそうにないんです」  この道に入って来た時にすれ違ったタクシーは彼女を乗せた帰りだったのか――。少女の状況に合点がいき、事件の心配は無いようなので武蔵は安心した。 「どこなのかな?」 「えと、この場所なのですが」
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