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「あの……」
武蔵の訝しげな視線に緊張したらしく、少女が恐る恐る口を開いた。
「ごめん、ごめん。どうしたのかな?」
彼女の緊張を解こうと、武蔵は優しい口調で問いかける。
「あの、大変申し訳ないのですが、お兄さんの車に乗せてもらえませんでしょうか?」
潤んだ瞳で少女がお願いをする。
「この先にある別荘で部活の合宿があるのですが、私だけ出発するのが遅れてしまったんです。ここまでタクシーを使って来たのですけど、途中でお小遣いがなくなってしまいまして……。ここから徒歩だと日没までにたどり着けそうにないんです」
この道に入って来た時にすれ違ったタクシーは彼女を乗せた帰りだったのか――。少女の状況に合点がいき、事件の心配は無いようなので武蔵は安心した。
「どこなのかな?」
「えと、この場所なのですが」
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