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少女はポシェットからスマホを取り出すと、地図アプリを起動して目的地を指した。そこは今いる山道をかなり進んだ先にあるY字路だった。一方の道は幹線道路に繋がり、もう一方は崖を横切って山へと続いている。別荘はその先の山の中にあるらしい。
確かに、少女の足では日のある内にこの場所に辿り着くには無理がある。元々このY字路を通って幹線道路に向かう予定だったし、彼女をここに置き去りにするのは後味が悪くなりそうだったので、武蔵はその頼みを引き受けることにした。
「! ありがとうございます!」
武蔵の快諾に少女は顔を綻ばせた。
「私、月森天と申します。よろしくお願いします」
「僕は松田武蔵。よろしくね」
スーツケースを後ろに積み、天を助手席に乗せると武蔵は再びアクセルを踏んだ。心なしかペダルが軽く感じた。
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