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再開された獣じみた交尾を見て、そいつは我慢ができなくなった。手近な木に触れると、太い枝を探り当て、鉈で切り取る。その断面は鋭い。即席の槍だ。右手に鉈を、左手に槍を手にする。
木陰からそっと出ると、ゆっくりと二人に背後から近づく。
……後二十歩。力強く大地を踏みしめながら。
……後十歩。男の捨てたタバコの火を踏み消す。その間、悲鳴を上げながら立ちバックで絡む哀れな男女は、快楽に夢中で周りの様子などまるで見えていない。
……後三歩。
そいつが二人のすぐ後ろに立ち、鉈を手にした右腕を大きく上にあげた。
降り注ぐ影から、男がようやく第三者の存在に気が付いた。怪訝な表情で振り返る。そいつは手にした鉈を素早く振った。
声を上げる間もなく、男の首が宙に舞う。首は草むらの中に、ゴロリと音を立てて消えた。残った男の体からは赤黒い血が噴水のように噴き出し、女の剥き出しの背中に降りかかる。
肌に生暖かい液体を受けて、女は振り返った。そして目にした。自分に挿入したままの男の首無し死体。そして、月光に照らされたそいつの姿を。
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