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そいつの体は羆ほど大きかった。時代劇に出てきそうなボロボロの笠を被り、白い布で口の周り覆い、赤い蓑を体に纏っている。まるで昔話に出てくるマタギか旅人だ。笠を深く被り、布で口元を隠しているため、その顔は良く見えない。だが、その合間からのぞかせる目は爛々と光り、得物を握る手は酷く爛れている。
女は機械が軋む様な金切り声をあげた。だが、そいつは怯まない。うるさい子犬を見るかの如く女を見下ろしている。
女は慌てて逃げようとした。だが、男の体ががっちりとその尻を掴んでいる。死してなお男が腰を振り続けているため、女は上手く動けない。男をくっつけたまま前に倒れ込んだ。
パニックを起こし、突っ伏しながら泣き喚く女の背中めがけて、そいつは左手の槍を振り下ろした。槍は鈍い音を立てて女の肩甲骨を破り、心臓を穿つ。女は「う」と声を漏らして口から大量の血の泡を吹く。
それでも女に息があるので、そいつは刺さった槍に体重をかけた。槍は肋骨の隙間から乳房を突き破り、地面に刺さる。槍を伝って血がシロツメグサにかかる。女は白目を剥くと痙攣し、絶命した。
それでも男の体は、まるで切り離されたトカゲの尻尾のように動きを止めない。そいつはそれを女の体から引き離すと、仰向けに寝ころがし、その股間を踏み潰した。股間に赤黒い花が咲くと、ようやく男の動きが止まった。
彼らの死を確認すると、そいつは二人の死体をブルーシートの上に無造作に投げ捨てた。草むらから男の首を探し出すと、それを持ち主の股間の上に置く。それからゴミを全て拾い集めて、死体の上にばら撒いた。ゴミまみれの哀れな男女の死体は、まるで捨てられたマネキン人形の様だった。
全ての仕事が終わると、そいつは森の奥の暗がりの中へと消えていった。
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