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山荘
少年が住んでいる街から電車で3駅ほど行き、そこから古びたバスに揺られて30分ほどいったところに
標高600mほどの山があった。
そこはキャンプ地もあるが、少年が2泊の予約を入れた山荘があるのはキャンプ地からけっこう離れた場所であった。
電車とバスで移動中も、山道を徒歩で移動している間も少年は学校での嫌なことは考えたくなかったが、どうすれば暴行も受けず、金も払わなくて済むかをひたすら考えていた。
そしてキャンプ地の脇を通ったが、キャンプ地には家族連れがたくさん訪れており、わいわいと楽しそうであった。
バーベキューのおいしそうないい匂い、カレーの匂い、子供たちの笑い声、笑顔で子供たちを見守る大人たちの顔。
少年は彼らの楽しそうな様子を遠目から見て、自分がどれだけ不幸な状況にいるのかを実感してしまい、泣きそうになった。
それでも少年は山道を歩いていく。
少年がこれから2泊しようとしている山荘はあきらかに最近建てられたものではない。
見た目はかなり古びていた。
電話で宿泊予約を入れた時は、相手が初老の男性であった。
念のため、他にも宿泊客がいるのか少年は確認したが、カップルが一組だけ予約を入れているとしか言わなかった。
山荘の宿泊料金(個室)について確認したところ、ホームページにかかれた値段よりもかなり安い値段に負けてくれた。また風呂やトイレは一応ついているとのことだった。
少年は先週も学校でいじめの加害者達にお金を数千円献上しており、その山荘以外に選択肢がなかった。
そうこうして山道を歩いていくと、目的の山荘に到着した。
ホームページに乗っていた写真よりもさらに古く見える。
少年は山荘の中に入って辺りを見回した。
かなり年季が入ってそうだ。
掃除は有る程度されているようだが、壁紙が剥がれ落ちていたり、ひびが入っていたりしている。
宿泊料金が安いのも納得できる。
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