ファーストコンタクト

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勿論、キャラクターとしての外見や性別が、必ずしも現実の人物と一致する訳ではない。男達も本気で出会いを求めている訳では無いだろうが、こういった行為に不快感を感じる人がいることも事実。余り誉められた行動でない。 『ほら、行こうよ』 男のひとりがジンジャーの腕をとり、自分の方に引っ張る。 別に、話しかけて来るだけならばまだいい。見知ら者通しであろうとも、それ自体は構わない。だが、相手の了解も得ずに触れてくるのは流石に許されない行為だ。 (そろそろ追い払うかな) こういった連中は、口で言うより実力行使の方が説得力がある。相手は元からナンパ目的のキャラクターだろう。そのような相手に遅れを取るほどジンジャーは弱くない。蹴りの一撃でも放てば、その実力の高さに逃げ出すだろう。 そう思い、利き足に力を込めた時………… 男のひとりが突然崩れ落ちた。 【ジンジャー】『…………え?』 自分はまだ何もしていない。それなのにナンパ男のひとりが倒れたのである。 『あ?』 『え?』 更に次の瞬間。 もうひとりの男が崩れ落ちた。 『…………ちょ?』 『な、何なんだよ!?』 一体、何が起きたのか? 男達は何が起きたのか理解できず困惑しているが、ジンジャーは倒れた男の様子を見て理解した。 倒れた男の体力ゲームが残り一割まで減少していたのだ。 (これって、気絶状態?) キャラクターの体力が急激に減少した場合、一定時間行動不能となる気絶状態となる事がある。 (でも、一体誰が?) 自分は何もしていない。ならば何らかの不具合か? (でも、そう都合よく起きたりはしないよね) ならば、何者かによる攻撃か? しかし、回りにそれらしいキャラクターは見当たらない。何より誰にも姿を見せずに攻撃することなど不可能だろう。少なくとも、ジンジャーの記憶にそのような特技は無い。 その時………… 『鈴の音』のような凛とした音が響く。 そして………… 『見苦しいですね。ここは人々の交流を楽しむ場所のはず』 人混みの中からひとりのプレイヤーが近付いてきた。 赤い着物を着た、日本刀を携えた女性のキャラクターだ。 『何より相手に声をかけるなら、先ずは己の身分を明かすべき』 彼女が歩く度に、その長い黒髪がふわりと揺れる。
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