ファーストコンタクト

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ーーーーー 『こちらにいらしたのですか。アウラ様』 アウラが人混みを抜けると、仮面の人物“ミナト”が近付いてきた。 アウラ『すみません。少しばかり席をはずしていました』 ミナトはしばらく黙っていたが、軽くため息をつく。 ミナト『あの頃より賑やかになったことは素直に喜ぶべき事なのでしょうが』 ミナト『その分、礼儀の無い者が増える事も避けられないのですね』 ミナト『ここはそんな者達の居るべき場所では無いというのに』 軽くため息をつく。 だがアウラは笑みを崩す事はない。彼女の瞳は周りのプレイヤー達を見つめている。 アウラ『それでも私達にとっては何ものにも変えられない世界のひとつ』 アウラ『良いところも、そして悪いところも見ていきましょう』 ミナトは一瞬驚いた表情をしたが、しっかりと頷いた。 ミナト『仰せのままに』 ーーーーさて、それよりも とアウラはミナトを振り返った。 アウラ『この場は落ち着いたようですし、次に向かいましょう』 アウラ『ミツルギを待たせるわけにもいきませんから』 そう言って酒場の外へと歩き出した。 そのとき。 『メイドキターーーーー!!』 ミナト(!?) 何やら響いている妙なメッセージに思わず力が抜けてしまう。 メッセージの方角を見てみると、三人組のプレイヤーのひとりがテーブル席でやたらクネクネと悶えて(?)いる。 ミナト『アウラ様。何やらまた問題でも起こったのでしょうか?』 アウラは暫く止まっていたが、何事もなかったように歩き出した。 いや、よく見ると肩がフルフルと震えている。 アウラ『いえ、あの方々にとっては“よくある”事なのだそうです』 そう語るアウラの表情は本当に“楽しそう”だ。 ミナト『……そうですか』 ミナト(アレも“良いところ”と捉えていいのだろうか?) 二人は未だプレイヤーで込み合う酒場の外へと歩いていく。 後には鈴の音だけが鳴り響いていた。
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