miserable wednesday

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 水曜日は憂鬱だった。  それは週の真ん中であるという理由ばかりではなく、一週間の中で最も面倒な、魔法理論の授業があるからだった。  魔法理論の授業は大きな丸い天窓のある教室で行われる。始業のチャイムと同時に、神経質そうにハイヒールの音を鳴らしながら、担当教諭のデルトラが教室に入ってきた。金髪のベリーショートの男勝りな風貌の中年の魔女だ。  デルトラは教卓に重たい本をバーンとぶつけ、「オッホン」と仰々しく咳ばらいをした。 「授業を始めるわよ。ほら、早く席につきなさい」  すでに教室にいた全員が席に着いていたにも関わらず、デルトラはまるでそれが授業を始める際の儀式であるかのように、毎回決まりきった口調で言うのだ。そして、獲物を探す鷹のような目で、ぐるりと教室中を見渡す。その瞬間、目が合えば災難に巻き込まれんとばかりに、すでに席についていた生徒の全員が下を向いた。  教室に流れる重たい沈黙を強調するように、時計の針の音はやけに大きく響いた。  アスターが視線を感じて顔をあげると、にっこりと笑顔でほほ笑んでいるデルトラと目があった。これもいつものことだ。 「アスター・タイムロット、立って。あなたの故郷について、いくつか質問がしたいわ」
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