miserable wednesday

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「学校生活はどうかね?」 「充実しています。勉強はとても楽しいですし、毎日が刺激的で」 「君は半年前に面談した時もそう言ったな」  フェザーリはどこか苦笑気味に笑ったが、「だがまあともかくよくやった、いやあよくやった」と、アスターの背中を叩いた。  アスターは上機嫌なフェザーリから視線を外し、ぼんやり教室の壁を眺めていた。すると、後ろのドアから、細いピンヒールを履いた女性が資料を山ほど抱えて入ってきた。先ほどのマリアチュールとは対照的に、すらりとした足の長い美人だ。 「ああ、これはこれはアームスヘッド教授。次、授業ですか」 「ええ」 「申し訳ありません、すぐどきますから」 「かまいませんよ。まだ休み時間ですし」  アームスヘッド教授と呼ばれたその女性は、ニコリとも笑わず、きりりとした口調でそう言った。講義を取っているジムの話では、授業中一度として笑ったことがないらしい彼女に、ついたあだ名は「氷の鉄仮面(フローズンアイロンマスク)」だ。 「わざわざお話しすることでもないんですがね、実はこのアスター君が学費全額免除審査に通ったんですよ」  アスターが教卓に教科書を広げているにもかかわらず、その言葉通り、いっこうに気にすることなくすぐ横で授業の準備を始めたアームスヘッド教授に、フィザーリは笑うのを我慢することができないといった様子で話しかけた。 「あの十年に一度、申請が降りるかもわからないと言われる、厳しい厳しい全額免除審査にですよ」 「そうですか」  アームスヘッドはあくまでクールに言った。それは自分が期待した返答ではなかったかもしれないが、これがこの媚びないことで有名な若い女教師の最上級の褒め言葉だろうと思い直したのか、「いやあ、本当に素晴らしい」とはフェザーリはうんうんと頷いた。そして「優秀な生徒には常に優秀な指導者がいますからねえ」と誰も聞いていないようなことをつけ加え、「後で研究室に」とアスターに早口耳打ちをしていなくなった。
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