door in the 5th theater

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四方を森に囲まれたここキャマレイト市は、キャマレイト魔法学園を中心とする学園都市だ。学園の校舎である巨大なキャマレイト城がそびえたつセントラル地区をぐるりと囲むように、十二に分けられた地区がある。生徒たちが生活する寮も、地区に一つずつ、別々の場所にある。  放課後、アスターは町の西側、寮のある第六地区ではなく、北側へと向かうバスに乗った。第十二地区にあるキャマレイト一の繁華街、エンターテイメント街に行くためだ。 「アスター」  ビルの屋上で夜空を眺めていると、自分を呼ぶ声がした。柵から下を覗きこむと、ビルの真下に、上に向かって手をふっている人物がいた。合図するように軽く手をあげ、アスターはその人物に向かって梯子を下ろした。  名前を呼んだ人物――レプトスペルマムは長い脚を苦心して折り曲げ、一歩一歩慎重に梯子を登ると、アスターの隣に座り、わざとらしく重たいため息をついた。 「どうして来なかったんだよ、今夜はノルニル会の集まりがあったんだぞ」 「そういうお前だって。まだ終わりの時間じゃない」  アスターが腕時計の文字盤を見ると、レプトスは 「お前が来ないから、途中で抜けてきちゃったんだよ」  しれっと肩をすくめた。 「ストックの奴が、俺のラムチョッパーの食べ方が汚いとかそんなつまんないことでネチネチ文句を言ってくるしさ」 「ああ、あのチウネ・タキユリの信奉者か」 「今日はタキユリも休みだったから、態度がでかいったらありゃしない。飲むか?」  ひとしきりぼやいた後、レプトスはリュックからスナック菓子とビールの缶を取り出した。どうやら会用のものをくすねてきたらしい。
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